かげタイムス
診察室からこんにちは。
医療の現場には、いつも最新の技術や考え方が取り入れられ、
患者さんの容体が1日も早い回復を目指して常に目まぐるしく変化しています。
鹿毛病院で働く医師や看護師、管理栄養士やリハビリ担当者など、
数多くの専門家は一体どんなことを考えながら治療に当たっているのでしょう?
毎日の診察の中からどんな想いが芽生えるのでしょう。
治療の裏側や日々考えていること、ふだんなかなか聞くことのできない
治療の裏側を、お届けします。
INTERVIEW 01
整形外科 竹山 昭徳先生
竹山 昭徳 (タケヤマ アキノリ)先生
整形外科
福岡大学医学部卒業
日本整形外科学会専門医
Q.どんなご縁で鹿毛病院に出会ったのですか?
鹿毛病院で働きはじめて2年ちょっとになります。それまでは、福岡大学を卒業後、整形外科の研修医として働きました。その1年半後に徳洲会病院の麻酔科、整形外科で現場に立ちました。再び大学に戻った後、荷山(ニヤマ)にある横倉病院に1年勤め、大学で大学院に4年間通いました。大学の救命センターを経て2年間行き、福岡市内の白十字病院へ3年間行った後に、ここ、鹿毛病院にやってきました。
Q.なぜ、数ある病院の中で鹿毛病院を選んだのですか?
福島大学の先輩がいたのと、同級生の野田先生が鹿毛病院に1年早く就職されて、噂も聞いて、鹿毛病院で一緒にやれたらいいなと考えたのです。同級生が同じ病院で働くことはなかなか珍しいんですよ。現在、鹿毛病院の整形外科の医師は常勤が5人と非常勤の先生が5人います。万全の体制を整えていると言えるでしょう。
Q.1日の流れを教えてください。
だいたい8時半くらいに出社します。まずは病棟にいる自分の患者さんの経過を診てまわります。午前中は外来を担当します。鹿毛病院は、整形外科の先生が多いので、ひとりあたりの患者数は10人から15人くらいを診ることになります。多い病院だと、ひとりの先生に対して20人から30人以上いるところもありますので、比較的ゆっくり丁寧に時間を使えると言えるでしょう。
Q.そうは言っても毎日めまぐるしいですね、これに手術なども行うんですよね?
手術は1時間から3,4時間。多いときは1日に3人くらいを担当します。手術は、立って行うこともありますが、指先の手術などは座ってやることが多いですね。手術中は全身麻酔で患者さんは眠っていることが多いですよ。
Q.整形外科では主にどんなことを診ていくのでしょうか?
まず、ここ最近は整形外科の患者さんは増えています。全国的に高齢化が進んでいるので、お年寄りが多くなっているから、腰とか膝が痛いという方が多いですね。その理由としては、年齢と共に、からだの柱となる背骨や腰が衰えてくるんです。若いうちは筋肉で支えているけれど、少しずつ変形したり、痛みとして症状が出てきます。患者さんの仕事や生活背景を聞きながら診察していくことで、生活習慣の中に原因が隠れていないか観察していきます。もちろん、骨の変形や、若い方でも骨に何かできている場合もあるので、触診だけでなく必ずレントゲンによる検査も行います。若い方の場合は、運動している場合はフォームが悪くて肩を痛めることも多いので、リハビリの専門家と一緒に、そうした視点から診ていきますので連携は多くとっていますね。情報共有をしっかり行い、双方の意見を交換しながら経過を見ています。
Q.最近は人工関節が増えていると聞きますが、実際にはどうなのでしょうか?
増えていますね。特に、膝や股関節はよく取り入れます。例えばO脚だったおばあちゃんが歳を重ね、脚が痛くなるなどの症例が増えています。擦り減った軟骨は戻らないので、傷んだところは削って、上と下にチタンやコバルなどの金属をはめ込みます。一生使えるような素材です。人工関節はいくつか種類があって、レントゲンやCTの画像から患者さんのサイズをみて選び、手術を行います。膝も股関節の手術も、およそ1時間から2時間で終わります。股関節の場合は骨をきって動かす、骨きり手術というのがあって、痛みは取れないけど経過を見ていくことを目的とした方法もあります。痛みの状況や、患者さんの年齢など、全体のバランスを考えながら、処置を選択していきます。つい最近も大きな人工関節の手術があったばかりですよ。
Q.なぜ竹山先生は整形外科を選んだのですか?
学生のときに、いろんな科をまわるのですが、一番明るくて楽しそうと感じたのです。特に大学の場合は高齢者が少なくて、手術をして元気になり帰っていくひとが多かったのもあるかもしれませんね。他に一般外科とか脳外科も雰囲気は良かったのですが、何しろ手術時間が長かった…というのもあります。自分自身も腰痛持ちなので、長時間手術は、無理なんじゃないかなって思っていました。
Q.いつも心がけていること
サービス業とは異なりますが、けれど、患者さんが私に診てもらってよかったなと、皆さんには満足して帰っていただくことを一番に考えています。そのためには、技術力の他にしっかり話を聞いて問題になっていることの根本を探っていくことが大事です。
Q .鹿毛病院のなかでも、特に整形外科に力を入れている理由はなんでしょうか?
整形外科と言っても、それぞれ専門や得意分野があります。鹿毛病院の守備範囲は広く、専門性をもって診ることのできる疾患は増えています。肩や腰を専門に診られる非常勤の先生もいらっしゃるので、大学病院までとはいいませんが、いろんな症例に対応できるのです。ひとの関節は100以上あって、専門が分かれています。膝の専門や股関節や、脚だけでも3つに分かれています。股関節、足関節、膝関節ですね。僕は足が専門です。最初についた先生が、その専門だったみたいなことをきっかけに、皆自分の専門を定めるケースが多いです。ちなみに、同級生の野田先生は一般外傷が専門で、唐島先生は膝が専門です。
Q.他の医師の皆さんと連携することもあるのですか?
はい、あります。定期的に開かれるカンファレンスは現在は月曜と金曜の週2回16時半からスタートします。患者さんごとに関係者が集まって皆で治療の方針を話し合っていきます。鹿毛病院全体で行う「トータルサポート」ですね。普通はひとりで全部を診るのが精一杯なところもあるので、横のつながりがあると、冷静な判断や俯瞰した治療計画が立てられるのです。各分野、肩も腰もそうですが、関節鏡を取り入れた手術もやっています。
肉眼では見えにくいようなところにもカメラを入れて見ることができます。脚だと2.7ミリくらいのカメラになる。また、切れた筋肉を縫う手術もあります。器用な医師もいるかもしれないですが、整形外科の医師に何より大切なのは一番は忍耐力かな。最初はね、糸がこんがらがったり、手術時間も長くかかったりする。それを経験して今に至っているかなと思います。あとは、見通し力。知識、経験も必要だとは思うのですが、治療経過を想像できないとなりません。そして患者さんの生活背景を想像することが必要となってきます。
Q.第一線を走る現役の医師の皆さんならではの視点は、どんな風に若手に伝えて行ってるのですか?
30代の若い先生は非常勤でひとり、週1回来てくれています。診察や手術もまずは現場から積極的に立ってもらい、一緒に体験してできるだけ伝えるようにしています。私自身は、時代的にも野に放たれて(現場に送り込まれて)きた経験の良さもありますが、僕らが教えてもらいきれなかった、体系化した治療をいまからきちんと教えてあげたいと思っています。
Q.鹿毛病院の好きなところはどんなところですか?
新しくできた東館のカフェにコーヒーを買いにいくのが楽しみです。リラックスできて、いい空間ができたなと思っています。普通は小さな売店だけで、缶コーヒーになってしまいますので(笑)。環境という意味では、仕事の内容が異なることで、コミュニケーションに様々な課題が残る部分はありますが、この先もっと医師と看護師、事務のスタッフとの連携を強めて、皆にとっての働く環境も整えていきたいと思います。
Q.ズバリ竹山先生の原動力は何でしょう?
子どもが3人います。2歳と5歳、7歳の男の子です。いつも走り回ってますよ(笑)。夜は9時くらいに、子どもと一緒に早く寝てしまいます。朝は5時くらいに起きて、水やりしたりとか。大学の時はラグビーをしていました。そういう日常の生活が原動力になっている部分と、良くなった患者さんの笑顔や表情、そして言葉からエネルギーをもらえることですね。どんどん元気になる患者さんを増やしていきたい、というシンプルな想いです。なんかね、手紙をもらったりすることもあるんですよ、そういうのはとても嬉しいですね。僕は患者さんの名前を覚えるのは苦手だけど、顔をみるとどんな症状だったか、どんな風に共に病気と闘ったのか、思い出すのです。
(話・文 stillwater)