日々とアートのあいだに。

鹿毛病院の中を歩いていると、入り口に、廊下に、病室に、カフェにと、
ふと目にした先にはいつもアート作品があります。
病院の中でアート作品に触れると、気持ちが和らいだり、楽しい気持ちになったり、
自分と日々の関係に少しだけ余白が生まれるような気がします。
ここでは、鹿毛病院と縁のあるアート作品や人を取り上げながら、
「日々とアートの間にあること」をお届けしていきます。

REPORT 01

みんなにとって心地の良い場所

PICFA(ピクファ)生活支援員社会福祉士
主任生活支援員 升本 好昭さん

やよいがおか鹿毛病院から車で5分、基山駅から歩いて5分のところにある、きやま鹿毛医院内に「PICFA(ピクファ)」はあります。医療法人清明会が運営する障害福祉サービス事業所就労継続支援B型の施設の名称で、障害のある方が、アートにまつわる創作活動を中心に仕事をしている場所です。

窓の外には、緑豊かな庭が広がり、気持ちよい光りが差し込むその場所は、病院内であることを思わず忘れそう。現在、「PICFA(ピクファ)」の利用者は8名。今回は、PICFAのスタッフで主任生活支援員の升本好昭さんにお話を伺うことができました。

「何か、人の役に立つ仕事がしたいと思って、福祉の仕事に就いて15年働いてきましたが、アートに関しては今勉強中です(笑)」と話してくれた升本さんは、短大の同級生で施設長の原田啓之さんから声を掛けられ、意気投合し、PICFAの立ち上げから現在に至ります。

普段は、PICFAの利用者が生活していく上で必要なスキルの支援や、利用者の家族のサポートをしていくのが升本さんの主な仕事。また、利用者が気持ちよく制作できるように、賑やかな雰囲気で楽しんでやることが好きなひとには大人数の部屋を用意したり、騒がしいのが苦手なひとには、少人数の部屋を用意するなど、利用者それぞれにあった制作環境を作るサポートもしています。「メンバー(利用者)が黙々と絵を描いている姿を見ると本当にすごいなって。よく、『どうしたらいいですか?』って聞かれたりするのですが、私自身が絵を描くことがあまり得意ではないから、そうした支援ができてないのはもどかしいなと感じています。絵に関して、僕らがどうこう言うことはないけれど、訊かれたら答えるし、伝えることでメンバーは安心して制作することができるようです」。また、利用者の作品が増えていくことはもちろん、そうした作品がPICFAのオリジナルグッズになって売れていくことにも面白さを感じている升本さん。

マルシェバックはPICFAオリジナルで最初に作ったグッズの一つで
メンバーの加田有紀さんの作品をデザインしたもの。同じデザインでバンダナも作った。

鳥栖の好きなところを伺ったら、基山町のいろんな方々がPICFAに関わってくれること、と話してくれました。「基山の中で、いろんなイベントがあって、地域の方から声を掛けてもらう機会があり出店したり、そういう交流や作品を介して知り合ったひとが見学しにきてくれたりする。PICFAにはいろんなひとが集まる、みんなにとって居心地の良い場所にしたいから、そういうことがとても嬉しいです。もっともっと地域のひとにきてもらって、交流しながら、基山でなにか一緒にできることを作っていきたい」と升本さん。

インタビューを終えた頃、部屋の向こうから楽しそうな声が聞こえてきました。気づいたらもう12時を少し回っていて、ランチタイムが始まっていました。お昼はフロアの中央にある大きなテーブルに集合してみんなで一緒に食べます。同じ時間に同じ場所で、思い思いに過ごしているランチの様子を見ていたら、PICFAが地域と繋がって愛されて育っていく光景が目に浮かんだのでした。